nobody hurts

August 31, 2010

20100831

「振動板が聴いてる音に興味があるの」



それぞれが無に対して抱く原風景と、それぞれ色とりどりの不滅と、時間と速さを競っている景色と、風速と速さを競っている風と、鼓膜みたいに震えている振動板と、振動板が聴いてる音に興味があるのと呟いている足音と、中音域で表現された高音域の粗さと低音域の平坦さ。


これってまるで音楽みたいじゃないと皮膚感覚を軸に脊髄を楽しんでいる足音と、それはまるで心みたいだねと目の裏の夏を月光の日差しで受け止めている靴紐と、それはそれはまるで体みたいなことばかり言ってと悪戯げな口調の足音と、日差しの記憶で影の再現を試みている夜の路上。


高音域で表現された掠れた低音域と、低音域で表現されたくぐもった高音域と、風景のない音と、響きのない光りと、足下のない地面と、頭上のない空と、映画のない字幕と、人称のない声と、風速のない風と、記憶のない懐かしさと、旅のない行き先と、もしくは家のない帰り道。

August 30, 2010

20100830

「初めて聞く音をなんで音だと確信できるんだろう」



風を孕んだ帆を結ぶ影絵を指の影に絡めて路面の銀幕に風を走らせている足音と、天性の狡猾さで理解の及ばぬ春と夏のざわめきの影絵を固い地面の上に結んだ水面で揺らぐ空を少しずつ解いて影の足しにしている足音の指先と、夏を挟んで足音と向き合う頭上の月の裏面を描く影絵。


もう出掛けようよという声の影絵を影に結ばせようとして結局はつまらない咳払いを足音の背後に落とす靴紐と、初めて聞く音をなんで音だと確信できるんだろうねとその時に戯れに問いかける足音の無言と、なぜその無言を無言なのだと確信できるのだろうかと戯れに考える靴紐。


音を影絵で結ぶなんて本当に馬鹿げてるしあなたのその耳だってわたしの影が結んだ影絵じゃないのと路面に揺らぐ光りの水面を見つめたままの足音と、時間の影絵を結っている足音の面影と、過去の影と、未来の影と、現在の影と、それぞれの結ぶ影絵が寄り添う路上で光りが揺らぐ水面。

August 29, 2010

20100829

離ればなれの影が描く影絵が重ねている手のひら。



影がつくる影絵と、影がつくる影絵で書き上げられた地図と、日差しで霞む影の影絵の地図と、地図を記すために指を結び影絵を広げている足音の影と、影がつくる影絵が描く地図の中に住む足音に似た誰かと、そしてまた影絵で月明かりを描いている足音の影。


月明かりを照り返す遠浅の水面と、もしくは月明かりにより描かれる遠浅の水面と、影絵により結ばれた小舟と、影絵で結んだ風をはらんだ帆と、影絵で結んだ風を含んだ頬と、影絵で垂らした水で喉を潤している足音と、影絵で結ばれた乾きと、影絵で結ばれた雲の影に遮られる影絵。


影絵により結ばれた音と、影絵により結ばれた静寂と、声により結ばれた影絵と、静けさにより結ばれた声と、静けさを結ぶ声と、声を結ぶ静けさと、離ればなれの影が描く影絵が重ねている手のひらと、その手のひらどうしが結んでいる月夜の影絵と、影絵で結んだ眼差し。

August 28, 2010

20100828

それぞれの明日であるそれぞれの今日。



両の手のひらですくいあげた遠浅の水ではなく遠浅の流れと、遠浅の水面から手のひらの上の流れへと渡りそしてまた水面へと還る小舟と、その小舟を表面に浮かべている眼球と、それぞれの目の裏の死角へと流れていく小舟と、またそれぞれの目の裏の死角から流れ出す小舟。


息を吹きかけて小舟の周りにさざ波を立たせている足音と、足音の目の裏の遠浅の水面と、靴紐の目の裏の干潟と、それぞれの目の裏の船と、それぞれ水平線と地平線の向こう側のそれぞれの明日と、もしくはそれぞれの水平線と地平線を挟んで向かい合うそれぞれの明日。


足音の明日から地平線の果ての足音の今日を眺めている靴紐と、また靴紐の明日から水平線の果ての靴紐の今日を眺めている足音と、それぞれの明日であるそれぞれの今日と、夜が訪れる度に溶けて見えなくなるそれぞれの今日を明日で隔てる水平線と地平線に時折手を触れる月明かり。

August 27, 2010

20100827

秒針のかんざし。



焦点と、点描と、筆先と唾液の墨と、声に導かれる視線と、薄目を開けたみたいな暗闇と、蝋燭の月明かりと、体温の空気と、血液の湿度と、素肌の絹と、背筋で震えている重力と、潮流を真似ている髪の毛と、毛穴に散りばめられた虹の欠片と、驚きも冷静さもない深み。


未来からの音のような視線と、指に蚕糸を紡ぐ指先と、手のひらで押さえた月光と、手の甲で弾いた月光と、蜥蜴が笑っている部屋の片隅と、冷房と亜熱帯と、延焼している一日と、水差しに残った水と、影が震動して鳴っている音と、目のなかの死角。


長針と短針で梳いている髪と、秒針のかんざしと、水平線のような明日と、遠浅の水面を掻いている腕と指と指先と、肩の形に浮かんだ息継ぎと、背骨の形に並んだ水切りと、肩胛骨の海溝と、海岸線の背中と、耳の奥の潮力と、聴力の潮騒と、手のひらで掬い上げた水ではなく流れ。

August 26, 2010

20100826

音量を絞り切った目盛りから息づかいだけが漏れている夜。



音の風景と、茶屋から渓谷を下る山道と、首もとから背筋を下る汗と、汗の滴の曲面を撫ぜるように下る光りの艶と、午後の光りの支配的な直線のなかを下る重力と、髪の毛の一本一本をばらばらに解いて喪失の予感を描画している獲得への期待と、髪を摘む風と区別のつかない重力の指先。


すべて音の風景と、石造りの街で足を止めてはときおり空の浮島を眺める人々の朝と、街から廃坑へと向かう廃線となった単線の区間に自前の鉄道を走らせている技術者たちと、その線路に沿って栄える村落と、水飲み場に落ちる汗と、貯水池に沈んだ拳銃と、いつか貯水池に飛び込んだ晩。


もしくは無音の風景と、音量を絞り切った目盛りから息づかいだけが漏れている夜と、閉じた目蓋からもまた息づかいだけが漏れている夜と、閉じた表紙からも息づかいだけが漏れている夜と、もしくは四小節で反復する閉じた拍子からも息づかいだけが漏れている夜。

August 25, 2010

20100825

本当にあった本当のはなし。



一日であることを見失っていつまでも続く区切りのないなだらかな昼夜と、目の前のただ一点の画素で成り立つ途方もない都市と荒野と、心の目玉で折り返す画素を内向きに覗き込み果てしなく分裂しながらふやけていく六十数億のただ一点を足音が石の上で乾かしている夏のほとり。


つまりは一人であることを見失って果てなく続く区切りのないなだらかな無人である一人と、動機でも行為でもなくいわんや動詞としてでもなく述語としてのみ記述可能な一人であることの匿名の名称と、目眩の内側で足下を支えている余りにも確かな一点と、素肌で宇宙を裏返す足音の裸。


川のほとりの石の上で服を乾かしている足音の裸を視線で確かめている靴紐と、見えない雨で氾濫している川の水を滴らせて今も柔らかな足音の裸と、靴紐の視線を裏返して今も柔らかな足音の裸と、そうかと呟く靴紐と、そうかなと呟く足音と、今もいつでも本当にあった本当のはなし。

August 24, 2010

20100824

「大事なものは目に見えないっていうなら
 いま見えてるものを見ないことに決めた」



大事なものは目に見えないっていうなら今見えてるものを見ないことに決めたと憤然とした口調で言う足音と、散らかった机の上を片付けるようなその語調と、大事なものは耳に聞こえないといさめる靴紐と、本当に大事なことなら別に言わないからと鼻を鳴らしながら返す足音。


ねえこれどこかに向かってるのと詰め寄る足音と、これがどこにいたのかの方が気になると答える靴紐と、これが今どこに向かってるかはその先で振り返られれば分かるかも知れないしと言わない足音と、これって今どこにあるか分からなくてずっと探し続けてるものだと思ってたよと靴紐。


その時に遠くから聞こえた警報音と、振り返った空で再び高度を上げている空の浮島と、煤けた茶屋の軒から差し込む見えない日差しのせいで強調される見えない陰影と、その時に日差しと区別のつかない風と、その時に日差しと区別のつかない影と、その時と区別のつかないいつか。

August 23, 2010

20100823

両耳の奥で澄ましている音楽。



両耳の奥で澄ましている音楽と、大音楽堂の廃墟と、廃墟の廃墟と、売店の跡地と、陳列棚と冷蔵庫の割れた硝子と、座席が開閉する軋んだ音と、埃が積もる音に似た瞬きと、瞬きをするたびに空間を刷毛で開いているような睫毛と、震動を覚えている空気と、匂いのしない匂いのする空気。


いつも忘れた頃に思い出す残暑と、足音にとっての夏の中で夕涼みをする靴紐と、いつか大音楽堂の舞台で過去の自分との輪唱を披露していた足音と、今もその輪唱に新たな旋律を加えては過去を書き変えることなく過去の意味を変える足音と、鏡に映る過去に現在が始まる一点を探す靴紐。


それがいつ始まったのか誰も覚えていない輪唱と、果たしてそれがすでに一巡したのかどうかすらも分からぬ輪唱と、それが輪唱であるのかどうかすらも定かではない輪唱と、もしくはその始まりを誰かがその最新地点から常に書き換えている輪唱と、誰も終わらせることのできない輪唱。

August 22, 2010

20100822

鏡をだます言葉。



一日を流れる日々と、そこに流れを見るように騙される眼差しと、眼差しを映す鏡と、鏡をだます言葉と、靴紐と足音だけがいる景色にいない靴紐と足音と、その時に誰もいない景色と、その時にも誰もいないその景色を見ている誰か二人がきっといるに違いないという半ば諦めにも似た確信。


そこにいない靴紐を知っている足音と、そこにいない足音を知ってる靴紐と、そこにいない靴紐と足音を知っている靴紐と足音と、そこにいなければならぬ靴紐と足音を知っている靴紐と足音と、そこにいない靴紐と足音を知らぬ靴紐と足音と、そこにいない靴紐と足音を忘れた靴紐と足音。


そうしてそこにいない靴紐と足音を忘れた靴紐と足音と、空に浮島が低く浮かぶ日と、目に見えない日差しのなか見えない雨で水浴びをしている足音と、茶屋の屋根の下で居眠りをしている靴紐と、自分たちがそこにいることの光りで自分たちがそこにいないことの影絵を投げる足音と靴紐。

August 21, 2010

20100821

この先とそのさらに先のあいだにある現在。



茶屋の外を流れる川と、水を流れている川と、日付を流れる時間と、血を流れる血管と、原因を流れている結果と、体を流れている動きと、風を流れている空気と、遠くを流れているここと、いつかを流れている今と、靴紐や足音を流れている誰かと、いつも未来から振り返っている足跡。


いつも未来から振り返っている足跡のその更に未来から足跡を振り返っている爪先と、つかの間爪先と目を合わせる靴紐には気付かぬふりの足音と、足跡を流れている歩みと、旅行鞄を流れている旅と、この更にさきを流れていくこの先と、この先とそのさらに先のあいだにある現在。


それと同じでこの前とそのさらに前のあいだにある現在と、茶屋の前を流れる川とその先の海とを結ぶ水の流れと、未来を分割している現在と、現在を統合している過去と、過去を分割している現在と、分割という行為のなかで立ち止まったまま歩き続ける靴紐の背中を未来から蹴る足跡。

August 20, 2010

20100820

異国とはここのことだよ。



いつもより少し低めに見える空の浮島と積乱雲と、茶屋の卓に並んだ椀と、軒を見上げて染みを動かしている足音と、床の上で静止の姿勢のまま落下している背負い鞄と、茶の湯気を鼻の奥に通して沸き上がる郷愁と希望と、昔と何ら変わることのない季節の風采と、熱波と涼気と鼻歌。


音階みたいな曜日の名前と、鼻歌の音階と、曜日の進行と、異国の果物を皿の上に切り分けながら鼻歌を歌う娘と、異国とはここのことだよと目線で話しかけてきた世話人と、客人に茶を用意している娘の連れ合いと、過ぎた日々が淀んでいるみたいな茶屋の内装と、皿の上の李。


想像力に見立てた両の手のひらで顔を覆い居眠りをしている靴紐と、その上を通過する空の浮島と、想像力の真下で夢を見ている靴紐と、その真上で燃え尽きそうな午後の灯りの線条と、今日は太陽が見えないねと日差しのなか水遊びをしている足音と、今日は雨が見えないねと返す靴紐。

August 19, 2010

20100819

いつもになれば消えてしまういつかやどこか。



花束の夢の沈黙をさらに黙っているという行き過ぎた擬態と、都市の言いなりの暴徒の足音の豪雨のように響くさまと、不可能が不可能であることの限界の外側で受け取った一本の髪の毛を手首に巻いて風向きを測っている波打ち際に息を吹きかける風速よりも遠くの足音。


明日になれば消えてしまう五分後や一時間後と、来年になれば消えてしまう明日や明後日と、いつもになれば消えてしまういつかやどこかと、誰かになれば消えてしまう靴紐や足音のあとを追い続ける足跡と、今も消えていないいつかとどこかを吹き消そうとしてはいつも確かめる息。


息を吹きかけられてそれを風向きとして示す一本の髪の毛と、風に逆らって飛び立つ鳥と、息に逆らって口から喉の奥へと流れる言葉と、自分の吐いた息に逆らうために今も沈黙を黙っている靴紐と、靴紐の立て膝の姿のつぼみのように揺れる茎をくわえる髪の毛を両手でまとめ上げる足音。

August 18, 2010

20100818

飴のようにのろい時針と、割り箸の分針。



靴紐に結わいた羽根と、足音の骨と、秒針の秒速と、秒針で練られている時間の甘みと、飴のようにのろい時針と、割り箸の分針と、蛇口から降る雨と、雨で顔を洗い雨で風を洗い流している足音と、色が溶けてしまわないように瞳孔に記号を刻みつけている靴紐。


色を表現する記号の形とたまたま一致するに至った重要な意味を持つ日付と、飴のように暗号を練るかのように解読を続けている暗号と、いつかそこに暗号を見ることを諦めるときと、もしくはいつだったか気付かずにそこに暗号を見ることを諦めたときと、その時に省略された脈絡。


美しさに省略される脈略と、意味を目指した集合となる事により省略される脈絡と、部分的に共有された時や場所により省略される脈絡と、かき集められたそれらの脈絡の意味が意味である事の限界の外側と、また可能が可能である事の限界の外側で一本引き抜いた髪の毛で髪を結わく足音。

August 17, 2010

20100817

「そんなのは心とは言えないよ」
「そんなのは形とは言えないよ」



分解された夏と、粒子状の空と、熱を帯びた回転と、空を帯びた回転と、汗をかきながらいつまでも溶けない氷と、路面が砂原に変わった駅前と、扉が揺らぐ陽炎で開閉する鉄道と、噴水で出来た踏切と、入道雲を切り抜いた影と、そんなのは心とは言えないじゃないという足音の声。


体の中の人型と、温度を伝う皮膚と、鳶として滑空している烏と、烏として滑空している光りと、光りとして昼の中をさまよっている真夜中と、真夜中として町中をうろついている真っ昼間と、音として人々の心を流れている静寂と、そんなのは形とは言えないじゃないかという靴紐の声。


靴紐にとっては心と形を結びつけている言葉と、足音にとっては形と心とを切り離している言葉と、靴紐と足音との唯一の接着面であり切断面でもある言葉と、地表を挟んで背中合わせの都市と荒野と、言葉を挟んで背中合わせの足音と靴紐と、銃弾を挟んで背中合わせの風と風穴。

August 16, 2010

20100816

宵の涼しさのなか浮かんでいる記号で膨らんだ風船。



夜風の涼しさを運ぶ街角の熱気と、窓辺で交差させた両腕に顎をもたせかけて記号で風船を膨らませている足音と、できるだけ遠くに東を運ぼうとしている西日と、西日の中で足下の東を軸にして描く円弧で東をせきとめようとしている靴紐と、それらの円弧でやがて描かれる惑星の円周。


その円周で東を回転の中にせき止めている惑星の外観と、西日の傾斜で押し寄せる東により波立っている大洋と、東を帆に受けて波頭を切り分けている小舟と、東を目蓋の裏に受けて更に東を思い出したり思い描いたりしている靴紐と、靴紐にとってはいつも西日の逆光のなかに立つ足音。


靴紐にとってはいつも西日の逆光のなかに立つ足音にとってはいつも涼しげな東に向けて運ばれている靴紐と、東の群青から宵闇へと滴る足下の惑星の回転と、空を引き受ける頭上の追い風と、東を追いかける背中の追い風と、宵の涼しさのなか浮かんでいる記号で膨らんだ風船。

August 15, 2010

20100815

地表を挟んだ都市と荒野。



生を裏返しにして驚きを冷静に見つめ返す余裕と、また死を裏返しに冷静さを驚きを持って見つめ返す懐からはみ出た懐の奥行きと、現実を裏返しにしてその隠れた折り目からその更に裏面に染み込んで蒸発した朝日のありかを炙り出している蝋燭の月明かり。


先出しされた生と、もしくは後出しされた生と、もしくは生に中継された生の開始と、もしくは生の末端に中継された生の驚きと、もしくは生の驚きに中継された生の開始と、もしくは生の驚きに中継された生の末端と、もしくは生の末端に中継された生の再現と、地表を挟んだ都市と荒野。


生の再現により中断された生の進行と、速度に溶けた生の姿を半分の速度で確かめている速度に溶けた生の姿と、窓や地表を飾る水滴のあとかたに雨の様相を見る時計仕掛けの時間の流れと、生活の様相に生を見る紙一重の遊離との接着と、浮遊感と、粘り気と、日曜に平日を見ること。

August 14, 2010

20100814

あらかじめ守るために交わさなかった約束の数々。



真っ直ぐな波の中で揺れ動いている点と、花束みたいな人々と、花束の茎を結って約束に代えた遠くの草原と、あらかじめ破られるために交わされ続けた約束と、鳴り止んだ音楽の中で鳴っている音の中で踊り続ける午後の続きの午前中と、あらかじめ守るために交わさなかった約束の数々。


約束と人々と不意打ちの約束と、予定調和である回想と、今ここであるいつかどこかと、酒の匂いのする空気と、空気の匂いのする酒と、炎天下を待ち伏せる曇天と、明日を待ち伏せしている今日と、今日を待ち伏せしている明日と、年中振り向かす誰かと、今日もまた頂点に達した出発点。


過去から振り返る未来と、未来から逆算する現在と、現在から逆算した約束の数々と、高鳴る胸に高鳴っている胸と、他の誰かの高鳴っている胸に今日もまた高鳴っている胸と、胸を高鳴らせていた過去に胸を高鳴らせている現在と、現在から秒刻みで逆算している古く新しい未来の日々。

August 13, 2010

20100813

言葉が漏れた時に響く言葉のうちに籠もっていた音。



時に目を覚まし起きながら眠りそのものを養っている分隊の兵卒と、往来を培っている軒下の日陰に差し込む日差しの三角形と、擦れ違いざまに静寂を練って街角に喧噪を塗りたくっている交通にひときわ涼しげな蝉の鳴き声と、耳をふさいでも手のひらから響いて体を循環する憂鬱の姿勢。


ここにいない誰かの分を生きているその誰かと、その誰かのいない光景を目撃しようとしているその誰かと、そこにいない誰かの影を踏んでいるその誰かと、そこにいた誰かの思い出話を聞き流しているその誰かと、そこにいるべき誰かの代理人を果てなく務めるそこにいるべき誰か。


鏡の割れた時に響く鏡のうちに籠もっていた音と、言葉が漏れた時に響く言葉のうちに籠もっていた音と、雨が地を打つ時に響く雨のうちに籠もっていた音と、目蓋を開く時に体内から視界に向けて漏れる音でも独り言でも涙でもないいつも同じ一滴の滴の明と暗。

August 12, 2010

20100812

粉々になった鏡の中で身支度を整える娘。



目蓋の内側に匿った誰かと、万が一に備えて他の誰かの目蓋の内側に匿った誰かと、鏡の中の誰かの目蓋の内側に匿った誰かと、鏡に映った誰かの目蓋の外側に匿われた誰かに暴かれる誰かと、合わせ鏡のその片方にだけ映っているものと、もしくはその片方にだけ映っていないもの。


合わせの鏡の一方に映った娘の真正面からの姿と、その鏡を反射するもう片方の鏡に映ったその後ろ姿と、その奥の食卓にもたれかかる娘の水溜りのようなうなじと、その奥の鏡に映っていない半身と、真夏の対面に置くと真冬を映す鏡と、光をかざすと暗闇を映す鏡。


つまるところ鏡に映らない鏡と、鏡を映さない鏡と、音を映そうとすると静けさを返す鏡と、音が響く鏡の差し向かいでずっと静けさが木霊しているこちらがわと、粉々になった鏡の中で身支度を整える娘と、それからこれから仕上がる鏡に向けて歩き出すその姿は映さない鏡の外側。

August 11, 2010

20100811

いつかのどこかにいけばきっと誰かが何かをあれしてるんだろう。



いつかのどこかにいけばきっと誰かが何かをあれしてるんだろうと俯き加減で見上げている遙か足下の空と、話しを聞いてくれた誰かにありがとうと伝えたいというだけの長い長いお話だとかと、いつか今ここできっと誰かが忘れてしまったものを代わりに見渡している隊商の娘。


長靴と骨だけの傘と陽気な一団と、雨が降るのを待っているあいだと雨が止むのを待っているあいだとのあいだと、乾きなよと冷房のきいた部屋の奥から呼びかける声と、届きなよと室外機に風鈴をあてている音と、膨らみなよと風を抱いた洗濯物の青い空を個人的に羽ばたいている影。


震えなよと冷房のきいた部屋で肌に濡れた衣服を貼り付かせている紫色の唇と、慌てなよと路地裏で刃物を首筋に当てられてながら呟いている今にもはち切れそうな血管と、その通りだよと明らかに間違った発言に答える代わりにいつかの特に記憶にも残っていない通りに向けて伸ばす指先。

August 10, 2010

20100810

位置とあっち。



銃弾と成り立ちと、景色と立秋と、戦と行先と、風と頬と、鳶と星々と、眼鏡と留め金と、眼球と遠心力と、蝉の声と耳の中の水と、外耳と反響音と、指先と方角と、目蓋と撃鉄と、火薬と涙と、乱数と日常と、戦場と飲料水と、土地と土と、植物と繊維と、羽根とはがねと、位置とあっち。


そうだいつか深くまで潜った貯水池から顔を出してそのまま見上げた空の浮島と、西日に染め上げられた鉱山の廃線の単線の線路脇の断層の縞と、どこからか飛んできてどこまでも飛び続ける弾丸と、がらくたのような銃を取り上げてその弾丸を撃ったのは自分だと言い張る酔っ払い。


例え中心を撃ち抜かれるように的を移動させても必ず錐揉みをしながらその的を外す弾道を辿る銃弾と、夜の息の根を止めるべくいつか夜の息の根から放たれたその銃弾と、電線を伝わる銃弾と、無線を伝わる銃弾と、音速で水面を跳ねる銃弾と、天気予報と廃墟と銃弾。

August 9, 2010

20100809

目を閉じるのも億劫な一日の終わり。



机の水差しと、喉に水を撒く女と、黙ってうなじを垂れている斜めからの後ろ姿と、秒針と長針で短針を研いでいる夜の時間と、風に擦れている窓と、揺れる光に揺れている影と、開いた本棚の中で閉じている本の文中で揺れている光景と、物語を綴じるに能わない異国の言葉の背表紙。


草原から見上げる二階の窓と、拡散しきった黄昏と、夜に映り込む残照の影絵と、硝子の外側に触れている透明な内側と、屋外から覗く室内の調光の窓硝子の上の幻のような照り返しと、幻のような瞳孔に照り返す光景を内側から見てる視点と、目を閉じるのも億劫な一日の終わり。


いつも夜を手元に引き止める手つきと、いつもの夜の目つきと、いつもの夜のめっきと、いつもの夜の瓦礫と、いつもの夜の粘液と、いつもの夜の遍歴と、いつもの夜の原液と、いつもの夜の面積と、いつもの夜のせめぎと、いつもの夜の演劇と、いつも夜の巻くねじと、いつもの夜の契機。

August 8, 2010

20100808

未知と機知の兼ね合い。



指を鳴らしている声と、親指を弾いている喉元と音階のための新しい平仮名と、線と緊張となんどきも相対的な解放感と、音沙汰の根元で息を殺している本音と、声を打ち消す論理と、いまだ定義されていない静寂と、もしくは誤認されている静寂と、静寂の初期値と、風を運ぶ追い風。


音のない音楽と眠気のない眠りと、時間を必要としない時間旅行と、絶体のない多分と、心のない感情と、体のない身体と、閉じることのない円の円周率と、逃げ道のない逃避行と、問いのない答えと、輪郭のない形と、表通りのない裏道と、一日のない夜と、終点を持たない始発列車。


振り付けと境界線から解放された舞踏と、肌との摩擦を踊る血管と、自明性のない未知と、余りにも自明である無知と、未知と機知の兼ね合いと、内部のない内破と、外部へと手を伸ばす内破と、非鮮明な懐かしさと、火のない煙りと、水のない滴と、過去も未来もない懐古と、留め針。

August 7, 2010

20100807

空耳と五線譜を上下する音楽。


起きたら耳の中で鳴っている音楽と、誰かが目を覚ますのを待っていた音楽と、未だ誰かが目を覚ますのを待っている音楽と、目を覚ましても音楽が鳴っていることに気が付かない誰かと、誰かが目を覚ましたことに気がつかない音楽と、空耳と五線譜を上下する音楽。


首から肩から肘から手首から中指に人差し指を加えた砂の上の足跡と、足跡から波打ち際から砂浜から駐車場から遊歩道から横断歩道に壊れた信号機に好きな色を加えた街なかへの地図と、点と線と文字と言葉と文章と物語に声を加えた鼓膜で見ているかたちの新しいかたち。


花火の雌しべに触れる花粉と、その日も夜が明けたのだと仮定して花火から落ちた種を拾い集める数えきれない人影と、時折土の畝から散る生きた火花と、花火に花粉を運ぶ夜風と、その日も夜が来たのだと仮定して吹いている夜風と、その日もやはり一日なのだと仮定して過ぎる一日。

August 6, 2010

20100806

ここにいない誰かと入れ替わったどこにもいない誰か。



まずは鉄塔と入道雲と青空と、商店街と閉鎖された店舗と張り紙と、子供と盲目の青年と管理人と、服装と曲目と背表紙と、小銭と空き缶と空き缶の中身と、細部と成り立ちと後出しの全体像と、駅とどこからか続いてきた線路とどこからか続いてきた国道と、人と人混みと人混みの隙間。


そして何もない場所にある何かと、何もかもある場所にない何かと、確かにそこになければならない何かと、誰かがここにいなければならないようにしてるそこにある何かと、ここにいない誰かと入れ替わったどこにもいない誰かと、ここにしかいない誰かと肩を並べるどこにでもいる誰か。


それから街と街並みと、時間と時計と、炎天下と散った桜と、体の外と頭の中と、平面と高さと、奥行きと消失点と、来た道と足下と、温度差と陽炎と、扉と花びらと、西日と唇と、音楽と耳のなかで動いている唇と、過去と未来と、今日とまだ見たことのないものばかりが見える。

August 5, 2010

20100805

聞こえない物を聞くために聞いているような音楽と、
見えない物を見るために見ているような色彩。



日に焼けた首筋から肩への痛みとうたと、年表にも伝票にも残らない今と、今である過去と、その後ろのかっこの中に点線で書かれている未来という文字と、その点をでたらめに結び繋げていくその先と、その先の先からこのちょっと先を振り返っているような懐かしい今と、新しい過去。


あらすじと本筋が入り乱れている万事と、犯人と探偵と被害者が同じひとりの探偵小説のいつまで経っても初めの一文字が書き足されていく最新の一行と、それと同じで最後の一文字を最初に書いてしまった書き出しの一行と、一秒が溶けてさかいめが分からない夏の一日。


聞こえない物を聞くために聞いているような音楽と、見えない物を見るために見ているような色彩と、届かない物を届けるために確かに届けている小包と、待ち合わせも約束もないままただ間に合い続けている手遅れの通過点と、本名もあだ名もなくただ出会いだけが通り過ぎる匿名の日々。

August 4, 2010

20100804

水平線まで海が一滴。



波の中心の軸と、軸の外側の円周率と、円周率を囲んだ年輪と、年輪に囲まれた季節と、歳月の中心のいつも同じ朝と、空缶みたいな夜を鞄に入れて理由の外側で飲み込む唾を満たす開け放たれた窓と、後頭部を一つまみにする髪の毛と、髪の毛を一つまみにする親指と人差し指と中指。


自生する夏と、年輪と花火と扇風機と、指紋と台風と腕時計と、蚊取り線香と目ん玉と十円玉と、涙みたいな汗と、風みたいにそよいでいる防砂林と、果肉の味がする炭水化物と、潮騒に黙り込む圧倒的な蝉の鳴き声を真似た目眩と耳抜きと、脱け殻を満たす海水と、水平線まで海が一滴。


過ぎなかった季節の延長線上にある夏と、南中する地球と、この夏の延長線上にある決して訪れる事のない季節と、窓際で扇風機に当たっていると何故か壁に触れる感触のする背中と、時間によく似た可能性と、確率とは似ても似つかない夜風と、言うまでもないと言うに値するということ。

August 3, 2010

20100803

意味はないが特別な日々。



匿名性の署名と、目眩が焼き付く静止画と、写真を挟んで初めて自明性と向き合う視覚と、鏡を挟んで向き合う場と遠近法と、日付変更線を挟んで向き合ういつからかと昨日までと今日からと明日からと、次の日付変更線を挟んで向き合う昨日までと今日までと明日からといつかまで。


問いと答えを離ればなれにしている人間の意識と、政治的に非政治的な存在と、汗に張り付いた涼しさと濡れた生地と体からはみ出た重みと、理解の後の時間の長さと、これ以上はない程の一筆書きにより書き換えられる過ぎた描線の意味合いと、秒針と手拍子と麦わら帽子を被った背表紙。


最高気温と体感温度と、基音と最高倍音と、脊椎を掻き鳴らしている六弦の響きと気音と、思い出してもいないのに窓の外を流れる風景と、思い出しているのにそこにはいなかった窓の内側で佇む唾を飲み込む音と、忘れたって事をいつまでも思い出させる音楽と、意味はないが特別な日々。

August 2, 2010

20100802

記憶に映り込む記憶ではないものの影絵。



行為としての行為と、粉々に砕けた中身を検分している全体と、億の細流の一つの感触と、感触として偽装された非接触の事実と、距離を感触としてとらえるための器官と、その器官を距離として捉えるための感触と、砕いた距離のひとつまみで描く架空の距離と、時間という文法。


一つの細流の億の感触と、言葉により導入された細かい物語と声と、ある尺度の上で重なり合う沸点と凝固点と、どこかといつかがいれかわる今とここと、いつかどこかで入れ替わった音と静寂と、視覚に映り込んだ視覚以外のものの面影と、記憶に映り込む記憶ではないものの影絵。


濡れた感触だけが降っている雨の影絵と、影絵だけが降っている波紋の水たまりと、波紋の中心に向けて正確に降り続ける無数の雨粒と、地図に降る雨と、重力ではなく幾何学により制御された雨と、濡れた紙と髪の毛と、風にはためいている紙と髪の毛と、地図の折り目を実際に流れる川。

August 1, 2010

20100801

一回きりで古びた懐かしい停留所。
いつか割り損ねた西瓜のその種を植え直している朝顔。



おそらく眠気の対義語である眠りと、眠りを裏返して肌の裏に張り巡らせた平熱と、目蓋のような日めくりの暦と、関節と重力と筋肉で乾かす背筋と、溜め息を充填する猫背と、撃鉄のようなうなじと、たえず初速を更新している終端速度と、まばたきのように繰り返している休日のあくび。


夏日のあくびと、血色の薄い肌と西瓜と、これから訪れる夏をざるで受けて氷で冷やしている日差しと停留所と、一回きりで古びた懐かしい停留所と、日傘と、首に巻いた布と、打ち水を灼く路面と、視界のように揺らいでいる熱気と、いつか割り損ねた西瓜の種を植え直している朝顔。


自分がそこにいなかった光景についての曲で飾る自分がそこにいることについての光景を聞き流している朝と冷房と、麦わら帽子と髪の毛と耳飾りと、気怠さを加速している朝方と、もう眠ってしまうのと問う声にまだ眠っているのと問う声と、おはようとおやすみとおはようのあいだ。