20100910 (b)
「そうだよそこには音があったんだよ」
「その音を聞いた人間はいなかったんだけどね」
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自分と出会った鼓膜が、自分と出会った網膜が、自分と出会った粘膜が、自分と出会った閉幕の合図が、自分と出会った油性の被膜が、自分と出会った弾幕が、自分と出会った水脈が、自分と出会った脈拍が、自分と出会った脈絡が誰かその人自身と出会ったその誰かと出会う。
伝説の二人を捜している一人が、名前すらなく誰かであるということが、流れのように正体を持たないということが、お尋ね者のように招待を待たないということが、空席が孕んでいる期待と孤独が始まりもしない何かが終わってしまったあとで続いているのを眺めている。
そうだよそこには音があったんだよと耳打ちをする伝説の二人の片割れが、でもその音を聞いた人間はいなかったんだけどねと肩をすくめている伝説の二人のもう片割れが、つまりそこに君たち二人が生まれる余地があったわけだなと呟く声がそれぞれの不在をたしなんでいる。