nobody hurts

August 12, 2010

twnovel_20100812

「空耳」と鍵盤で弾いた。誰かが言った何かを音階だと思い「ソラミミを聴いた」という私たちの琴線はある種のコード感に呪われているのかも知れない。地が口を開けてやがて全てを呑み込んだように、音という音を吸い込む空が単に私たちの耳に耳を澄ましていただけかも知れない。



「わたしがその中で身支度を整えていたという割れた鏡はこれ?」僕が首を振ると彼女は室内の鏡状の物を叩き割り質問を繰り返す。彼女はいずれ僕の目をつぶすだろう。その時に彼女が僕の目に映る自分の目を見るのならば彼女は自分の目をえぐるだろう。彼女はそのように徹底している。

August 8, 2010

twnovel_20100808

消えた炎と涸れた水がある。片方は甘い匂いのする息に吹き消され、片方は柔らかな布に吸い取られたのだった。甘い息は溺れ、柔らかな布は燃える。可能な零が入れ替わる。炎の形に凍った水が溶ける。可能な零はかつて不可能な零を内包した。息は凍った炎を吹き消すことを諦めない。



点描をしているのだと思い遠くから見ていた。実は震えていた。遠くから見られていると思い震えていた。実は目の前の光を見ていた。震えを止めようとその身を自ら抱いたのだと思った。それは誰か別の人の手であった。それをまた遠くの誰かが見ているのだと思っているのだと分かった。



複数の戦場があるが戦いは同時には行われない。勝敗の数は予め決まっているがその順番は永遠に定まらない。公平な観測者の不在を意味するかのようだ。戦闘は行為の副産物である。観測は戦闘そのものである。その逆も真である。いずれにせよ勝敗は関わりを持たないかのようでもある。

August 7, 2010

twnovel_20100807

どこまでも昇り続ける花火があった。いつその花火が打ち上げられたのか誰も覚えていない。私たちはその花火が昇る様子を長いあいだ見つめ続けた。私たちの子孫はその花火が開く瞬間を見るかも知れない。私たちはその花火が開いた様子を想像してそれを絵や文章に写す。

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